人と組織を動かす原則1「まずは相手を受け止める」

やらなきゃいけないことは増え、品質もより高いものを求められていくのに、人員は減り、残業時間は減らさなければならず、かけられる経費も削られるばかり。

全て自分でできるわけでもないので、自発的な部下、自走する組織のように人と組織に動いてほしいけど、なかなかそうもいかず。

聞こえてくるのは「これはどうしましょうか?」と些細なことでも指示を求めにくる声ばかり。

周りを見渡せば、やる気があるのかないのかわからなかったり、つまらなそうにしていたりする表情ばかり。

報連相もないので「あれどうなった?」とこちらから聞かなければ情報がつかめない状況で、話を聞けば何も進んでいなかったり、指示したこととは別のことをしていたり、どうしてそうなのか理解に苦しむような言動に話はかみ合わず、イライラは募るばかり。

そうした事態にならないように、経営者や管理職、リーダーといった人たちの中には、人と組織が自ら動くことを願っている人が多くいるようです。

そうした方に向けて、今回から数回に分けて人と組織が動かすための原則をいくつか紹介します。

原則1は「まずは相手を受け止める」。

「まずは相手を受け止める」とは?

インド発祥の寓話に「群盲象をなでる」というお話があります。

むかしむかし、あるところに6人の目が見えない人がいました。

あるとき、その6人の前に大きな象がやってきました。

6人はそれぞれに象をなでて、象とはどういう動物なのかを話し合いました。

1人はお腹をなでて、象とは「壁」のような動物だ、と言います。
1人は鼻をなでて、象とは「太い蛇」のような動物だ、と言います。
1人は耳をなでて、象とは「うちわ」のような動物だ、と言います。
1人は足をなでて、象とは「木の幹」のような動物だ、と言います。
1人は牙をなでて、象とは「槍」のような動物だ、と言います。
1人は尻尾をなでて、象とは「ロープ」のような動物だ、と言います。

6人はお互いに相手の話を聞かず、自分の意見が正しいと言い張り、ついには喧嘩になってしまいました。

この話を聞いてみてどう思われますか?

誰もが正しいことを言っていて、誰一人間違ったことは言っていないのに、話はかみ合わず、喧嘩にまで発展してしまいます。

いやいや、これは目が見えない人の場合だからしょうがないよね、とか、自分は他の人よりも良く物事を見ているから自分には当てはまらないよ、って思われる方もいるでしょう。

確かにあなたは目も見えるでしょうし、他の人よりも良く物事を見ているでしょう。

それでも残念ながら、人間だれしも全てを見て、全てを把握するのは不可能なのです。

もしよかったら、目の前にサイコロが置いてあるのをイメージしてください。

どうでしょう、数字が書かれている6つの面を全て見ることができるでしょうか?

もし慣れ親しんだ6面のサイコロではなく、1~20の数字が書かれている20面体のサイコロだったら、どこにどの数字が書かれているかを見ることができるでしょうか?

ましてや、もっと複雑な考え方や心を持った人の場合はどうでしょうか?

いろいろな人がいる組織の場合ではどうでしょうか?

そして、ここに集団で何かをするとき、人と組織を動かすことを目指しているときにオススメの考え方があります。

「誰もが正しい。ただし、全体から見ると一部だけ正しい。」

僕はこれを「システム・コーチング®」という集団内の関係性を望ましい方向へ変えていく手法を学んだ時に知りました。

そして、複数名でプロジェクトを進めたり、研修を受けたりしているときなどに、まさにその通りだと実感しました。

家族や知人と話していてもそれぞれに考え方が違い、それぞれの正しさを持っていることもわかるようになりました。

先ほどの「群盲象をなでる」のお話しも正に「誰もが正しい。ただし、全体から見ると一部だけ正しい。」ですよね。

さて、これを頭の片隅に置いたとき、目の前にいる人にどう対応するかは変わってくるでしょう。

相手は、あなたとは違う物事の見方、考え方を持ち、自分自身の正しさに従って意見を述べ、行動している、あるいは行動しないことを選んでいるのです。

たとえそれがあなたにとって理解不能であったり、望ましくない事態を招いたりしたとしても。

ことわざに「盗人にも三分の理」とありますよね。それと似たような感じです。そこにはそれ相応の理由があるのです。

人と組織が動くためには、「誰もが正しい。ただし、全体から見ると一部だけ正しい。」との考え方のもとに、まずは相手を受け止めることが大切です。

相手を受け止めるとは、相手の話によく耳を傾けたり、相手の行動を認めたり、相手の存在自体を尊重したりすることです。

あなたにはまだ見えていない相手の物事の見方、まだ聞いていない相手の事情、言動の背後にあるその人が持っている正しさに好奇心を向けて知ろうとすることが人と組織が動くために大切です。

人と組織を動かす、自発的に動き始めるためには「まずは相手を受け止める」です。

相手を受け止めると何が起きるか?

あなたが相手を受け止めると、お互いの間に心理学でラ・ポールといわれるある種の信頼関係が生まれやすくなります。

あ、この人はなんか接しやすいな、感じがいいな、この人なら私の話をちゃんと聴いてくれるかも、私のことをわかってもらえるかも、といった肯定的な感覚が生まれやすくなるんです。

こうした関係性は、相手にとっては話しやすく、自分の考えを出しやすくなります。

それによってあなたは新たな情報や自分にはなかった視点を知ることになるかもしれません。

また、相手からすると、自分の考えを口にすることで頭のなかが整理されます。

そして、自分の中から自分の考えを出すことで、他の人の話を聴く余裕、他の人の話を受け入れる余地を持てるでしょう。

自分の考えを口に出さずにいるというのは、両手で何かの荷物を持っているようなもの。そして、口に出すというのはその荷物をどこかに置くような感じです。荷物を置かないと両手がふさがっているので新たな荷物を持てないですよね。そして、いったん自分の荷物を置けば、自分の荷物を持ち直すことも、新たな荷物を持つこともできるし、場合によっては自分の荷物と新たな荷物のいいところを取り出して梱包を変えて持つこともできます。

また、ラ・ポールがある関係というのは心理的に安心安全な環境でもあります。

そうした安心安全な環境では、失敗や非難に対する恐れから消極的になるのではなく、成果や成長に向かって前向きに行動する、挑戦する気持ちにもなりやすくなるでしょう。

ラ・ポールを築き、相手が自分の頭の中を整理し、他の人の考えを受け入れ、前向きな行動、挑戦する気持ちを持つためにも、まずはあなたが相手の話を聴き、相手の考えを認める、相手を受け止めること。それが、人と組織を動かす原則です。

相手を受け止めないと何が起きるか?

あなたが相手を受け止めないというのは、相手からすると何かしら否定されているのと同じです。

「誰もが正しい。ただし、全体から見ると一部だけ正しい。」にあるように、人は誰しも自分にとっての正しさを持っています。

それを否定されるということは誰にとっても心地よいものではありません。

ときには、それに対して自分を正当化したり、自分を守ったり、あるいは他の人に対する非難を産むことになります。

ワシントン大学名誉教授のジョン・ゴットマン博士という方が「関係性の4毒素」という概念を提起しています。詳しくは別の機会でお伝えしようと思いますが、「非難」や「防御」といった接し方は関係性を徐々にむしばみ、悪化させていきます。

悪化した関係性の中では、人はなかなか自発的な行動や前向きな言動、課題に向かって挑戦する気持ちにはなれません。

それでも、役職や立場などで優位にある場合は人と組織を強いて動かすこともできるでしょう。

しかし、それは北風と太陽で言う北風のようなもので、相手の抵抗する気持ちを置き去りにして人と組織を動かすことにしかなりません。

それはお互いの心の中でストレスとなり、そうしたストレスに対する対症療法的な対応として、従わざるを得ない立場の人は自分の意見を持たないようになり、物事を進めなければならない立場にある人は更に指示を出さざるを得ない状態になります。

そうすると、相手は表面上で従ったり、言われたことしかしなかったり、次第に指示待ちや細かな点まで確認を求めるようになったりします。

そして、相手は物事を自分事としてとらえなかったり、自己弁護に終始したり、水面下で非難し合ったりと更に状態を悪化させていきます。

それは人と組織が自発的に動く状態ではなく、決してあなたの望んでいる状態でもないでしょう。

受け止めると賛成する・同意するの違い

ちなみに、相手を受け止めることと、相手に賛成する、同意するというのを区別しています。

相手を受け止めるということは、相手がそういうふうに考えているんだね、相手の言動にはそういった理由なり背景なりがあったんだね、相手がそういう人なんだねと良し悪しの判断なく認めるということです。

相手を受け止めるということは、あなたが相手に賛成したり、同意したりするのではありません。

相手を受け止めるというのは、相手に従ったり、相手の好きなようにさせたりということではなく、相手を認め、そこに全体から見た一部分の正しさがあることを知るということです。

自分の気持ちをどう扱うか?

ここまで人と組織を動かすために相手を受け止めるということについて書いてきましたが、人間ですから相手の言動に対して感情的にが揺さぶられることもあるでしょう。ときには反射的に反応してしまうこともあるでしょう。あるいは自分の気持ちを我慢することでストレスを感じることもあるでしょう。

心理学者のヴィクトール・E・フランクルは、「刺激と反応の間には『間』があります。その『間』において人は自らの反応を選んでいます。その反応は、自らの成長や自由によります。」と述べています。

そのときにどんな反応をするかで、あなたという人が問われているのかもしれません。

そうしたときに適切に自分の気持ちを取り扱ったり、より望ましい反応したりするための方法をいくつか紹介します。

1) 深呼吸をする。

簡単な方法ですが、大きな効果が得られます。

気持ちが高ぶっている状態というのは、反射的な状態であり本来のあなたではありません。

深呼吸をして、自分の中の力み、人を非難したり、自分を防御したりしたくなる気持ちを外に出すようなイメージでゆっくりと息を吐きだすことは本来の自分に立ち戻るのにとても役に立ちます。

そして本来の自分に立ち戻って対応すれば、人と組織を動かすためにより適切な対応ができるでしょう。

2) 自分の気持ちを出す場所を用意する。

これは、コーチやメンターといったあなたが信頼できる人、あなたのために関わってくれる人を見つけて、その人に話を聴いてもらったり、あるいはノートや日記などに自分の気持ちを書き出すことです。

自分の内側から外側に出すことによって自分の内側にたまっていたものが出ていき、内側に余裕を作り、自分を整えることができます。

内側に余裕があれば、新たな気づきや成長が得られることもあります。

自分を整え、気づきや成長をもとに対応すれば、人と組織を動かすためにより適切な対応ができるでしょう。

3) 自分の感情を認め、充分に感じ尽くす。

感情は意味があり、尊いものです。

私たちは生まれてからこれまでの社会生活の中で、周りから受け取った情報や経験に基づいて、感情に良し悪しをつけ、押さえつけたり、無視したりしがちです。

しかし、本来はどんな感情でも人間が生まれ持って備わってきた尊いもの、役に立つもの、力となるものです。

感情を持つことは自然なことです。

一方で避けたいのは、感情を押さえつけたり無視したりすることにあなたのエネルギーを浪費したり、感情を不自然な形で出してしまったり、感情にハイジャックされて望ましくない言動をとってしまうことです。

避けたいことをさけ、感情を適切に役立たせるためには、どんな感情であれ、自分の中の感情を認め、その感情を充分に感じ尽くすことです。

自分自身を受け止めるといってもよいでしょう・

そうすると不思議なことに感情を生み出していた自分にとって大切な信念や価値観に気づいたり、感情をあなたが本当に望んでいることを実現するための力にしたりすることができます。

自分の中の固さが抜け、より自然な自分で人と組織を動かすためにより適切に対応していくことができます。

まとめ

「誰もが正しい。ただし、全体から見ると一部だけ正しい」という考え方をすると、自分には理解できなかったり、過度に感情的になったりするような言動も受け止めることができます。

そして相手を理解し、相手の中の正しさを認めていくことで、相手の中にも他の人の言動を受け止める余裕が生まれます。そしてその先にはお互いの考え方や言動の違いを越えて関係性を高めることができます。

ときにはその違いを新たな創造の機会とすることもできます。

これまでのやり方やお互いの関係性を変えていくには、時間や労力がかかってなかなか成果が見えてこなかったり、ときには混乱が生じることもありますが、必ずあなたが本来望んでいることが実現していきます。

人と組織を動かすために「まずは相手を受け止める」。ぜひお試しください。

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