人と組織を動かす原則2「認知し、励ます」

経営者や管理職、リーダーといった人たち、人と組織が自ら動くことを願っている人のご参考になるように数回に分けて掲載している「人と組織を動かす原則」シリーズ。

前回の「まずは相手を受け止める」に続いて、今回は「認知し、励ます」について紹介します。

認知や励ましというものがどういったものか、それをどんな風に使うのか、どんな役に立つのかをご覧ください。

「認知」とは?

認知とは、その人の「人となり」や「内なる特性」を認めて本人に知ってもらうことです。

自分自身では気づかないその人が持っている素晴らしさ、可能性に光を当てます。

それはまさに砂に埋もれた砂金、ダイヤモンドの原石を明らかにするようなもので、その人自身の輝きを増すことにもなります。

より効果的に人を認知する要点は、相手の行為や成果を認めるだけではなく、その人そのものを認めていくこと。

例えば、高い営業成績を上げた人に対して「素晴らしい営業成績だね!」と成績を中心に褒めるのではなく「○○さんは日々の努力を積み重ねてきたんだね」とか「○○さんはお客様を大切にし、お客様から信頼される人だね」などのように相手の人となり、内なる特性、その人そのものに対して言葉を贈ります。

このようなその人そのものの素晴らしさ、可能性を認めて本人に知ってもらうことにより、本人が意欲的になるだけでなく、本人が知らなかった自分自身の一面に気づき、それを活かしやすくなっていきます。

人は誰しも自分自身のことについて知らない部分があります。

人の成長や人と人との相互理解に関する考え方に「ジョハリの窓」というものがあります。

ジョハリの窓

自分自身のことについて、自分が知っているのか知らないのか、他人が知っているのか知らないのかの2つの軸で分けています。

このジョハリの窓では、自分も他人も知っている部分を「開放の窓」と呼び、その部分を広げていくことが本人の成長や、組織における相互理解につながります。

あなたがその人が持っている素晴らしさ、可能性を伝えることにより、本人が自分自身の素晴らしさ、可能性に気づくことになります。お互いにそうした部分を伝えあっていけば、相互理解が進み、一人ひとりも動きやすい組織にもなります。

ちなみに、人は誰しも相手の言葉が本心から出たものかそうでないのかを何となく気づく事が出来ます。

ぜひ、表面的な誉め言葉や取ってつけたような認知の言葉ではなく、あなたの本心から出た認知を相手に届けてみてください。それが相手の今後に向けての大きな力になります。

相手の中で成長しつつある部分、強みとして伸びつつある部分に暖かい認知を投げかければ、それが栄養となり、そうした部分が大きくなっていくでしょう。

そして、その人そのものが成長すれば、自然とその人がとる行動も変わり、その人が属する組織の行動も徐々に変わっていくでしょう。

「励ます」とは?

励ますとは、相手を後押しすることです。

人は誰しも何かをしていくにあたって、ほどほどのところで満足したり、充分な力を発揮できない状況に到ったり、迷ったり、躊躇したりすることがあります。

そんなときにあなたが心からの応援の気持ちを込めて贈る励ましは、相手にとって大いに力になります。相手の中の力強さ、まだ活かしきれていない能力、心のエネルギーといったものを呼び覚まし、更なる一歩を踏み出すことにつながります。

例えば、何かのプロジェクトを進めていく中で当事者が困難な状況を迎えることがあります。

そんなときに、「○○さん達がここまでどれだけ努力を積み重ねてきたかを知っているよ。大丈夫、ここまでの努力は無駄にはならない。○○さん達なら絶対にできる!」とか、「○○さんたちは素晴らしいチームワークと企画力、実行力を持っている。いまこそそれを発揮するときだよ!」といった心からの応援の言葉を贈ることは当事者が動くことを後押しします。

また、励ましは言葉だけではありません。あなたの態度、あなたがすることが相手にとって励ましになることも大いにあります。

例えば、部下が動きやすいように上司が環境を整えることも部下にとっては励ましの一つになるでしょう。

あなたが相手を励ますということは、相手にとっては自らしようとしていること、その先に得られること、その意義を信じられるようにすることでもあります。

ぜひ、相手がそうしたものを信じられるように、あなたも相手のしようとしていること、その先にあるもの、その意義を信じて励ましを贈りましょう。

認知や励ますにあたって大切な在り方

認知や励ますにあたっては、あなた自身の在り方も大切です。

それは、相手を信じ、心からの応援の気持ちで認知や励ましを贈ることです。

人は他人がどんな気持ちで接しているかを何となく感じることができます。

あなたが表面的に認知や励ましを言っていたり、自分の思う通りに動いてほしいから認知や励ましを贈っていると、相手はそれを察して逆に意欲をそいでしまうこともあります。

また、あなたは相手を立場や力で動かしたり、心理的な圧力をかけて相手を動かすこともできます。

しかし、それは一時的な効果しか生みませんし、中長期的には逆効果にさえなります。あなたの目が行き届いている範囲では動いているかもしれませんが、あなたの見えないところ、不在の時には人や組織が自発的に動くことにはなりません。

認知や励ましはそうしたものとは違います。

さらに、あなたが在り方で相手に接しているかによって相手がどう成長するかを左右することもあります。

それはピグマリオン効果とも言われるものです。

相手をどう見ているかが相手にどんな影響を及ぼすかを試す実験として、アメリカ合衆国の教育心理学者ロバート・ローゼンタールによってなされたものがあります。

それは、子どもにあるテストを行う一方で、そのテストの結果とは関係なく複数の子どもたちを無作為に抽出します。そしてその無作為に抽出された子どもたちを「将来成績が伸びる子どもたち」としてその子たちの先生に伝えます。その後しばらく時間が経ってから再びテストを行うと、その無作為に抽出された子どもたちの成績が著しく伸びていた、というものです。

この実験をめぐっては反論もありますが、あなたが相手をどう見ているかが相手に影響を及ぼすことはあります。

認知や励ましをするにあたっては、相手の素晴らしさや可能性に向け、その人そのもの、その人がしようとしていること、その先に得られるもの、その意義を信じることを大切にしましょう。

士は己を知る者の為に死す

故事成語の一つに「士は己を知る者の為に死す」というものがあります。

これは、古代中国・戦国時代の晋の国の人、予譲の逸話から生まれたものです。

予譲は有能な人でしたが、その能力を認めてくれる人になかなか出会えずにいました。そんななか、晋の智伯という王に仕えることになりましたが、この智伯は予譲の能力を認め、それに応じた処遇を与えていました。

この智伯という王は、残酷な王として人々から嫌われ、恐れられていた人物もあり、やがては趙・韓・魏という3つの勢力により滅ぼされます。

そうして主君である智伯を失った予譲ではあるが、「士は己を知る者の為に死す」と言い、何度も主君の仇を討とうと試みたというお話です。

これは主君への忠義を貫く話として後世にまで語り継がれている話ですが、自分が認められることがどれだけその人の動く力になるかを教えてくれます。

人は、人から掛けられた言葉やとられた態度に影響を受け、それに応じた言動をしていきます。

あなたが相手の素晴らしさや可能性に光を当てれば、相手もそれに応じた輝きを発揮します。

まとめ

人に認められたことがどれだけ嬉しく、意欲的になったか、自分自身の挑戦や成長につながったか。

あるいは、人から励まされたことがどれだけ自分の力になったか、苦境から救われたか。

そうしたことは、誰もがこれまでの経験で知っています。

それと同じように、あなたが認知や励ましを贈ることで、相手を意欲的にし、挑戦や成長につなげ、相手の力になり、苦境からさえも救うことができます。

時間がかかるかもしれませんが、一人ひとりが自発的に動き出せば、自然と組織も動き出します。

人と組織を動かすために、日常の関りの中に認知と励ましをお試しください。

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