未来を創る 理念・リーダーシップ研究所

人と組織を動かす原則3「相手の意欲を引き出す」

まず、相手の心の中に強い欲求を起こさせること。これをやれる人は、万人の支持を得ることに成功し、やれない人は、一人の支持者を得ることにも失敗する。

オーヴァストリート教授

経営者や管理職、リーダーといった人たち、人と組織が自ら動くことを願っている人のご参考になるように数回に分けて掲載している「人と組織を動かす原則」シリーズ。

前回の「認知し、励ます」に続いて、今回は「相手の意欲を引き出す」について紹介します。

人は誰しも心を持った存在であり、その心がその人の行動のもとです。

冒頭の言葉はデール・カーネギー著の世界的ベストセラー「人を動かす」でも紹介されていますが、相手の心の中に強い意欲を起こすことが人を動かし、組織を動かします。

その相手の心の中の「意欲」(モチベーション)について紹介していますので、どうぞご覧ください。

アメとムチは効果があるのか?

相手が自分の望み通りの動きをしたらアメ(報酬)を与え、そうでない場合はムチ(罰則)を与える「アメとムチ」の手法。

いまでもこの考えにもとづいて人や組織を管理するところはあるでしょう。

でもこの考え、どうやら効果がある場合とそうでない場合があるようです。

効果があると言われているのは、短期的に結果が得られる定型的な作業、ルーチンタスクとも呼ばれているものですね。

  • データ入力〇件で報酬〇〇円。ミスがあったら×件あたり××件を報酬から差し引く。

といったような、マニュアルに沿って誰でもできる作業、難しい判断や高い創造力は求められない作業のときにはアメとムチは効果があると言われています。

一方で、定型化されていない作業、自分の判断や思考力・創造力が求められる作業では「アメとムチ」は逆効果と言われています。

  • 新規企画や改善提案が〇件以上であれば昇給〇円、〇件に達しなかったら減給×円。

という制度があったらどうでしょう?

短い間であれば多少の効果はあるかもしれませんが、中長期的には成果の減少、意欲の喪失、創造性の低下、反倫理的な言動の増加などが起こると言われています。

こうしたことを考えると「アメとムチ」ではない別の概念から人と組織を動かす方がいいでしょうね。

人の意欲(モチベーション)に関する理論

ここで人の意欲に関する有名な理論を3つ紹介します。

(1)マズローの欲求五段階説

アブラハム・マズローによって提唱された人間の欲求に関する理論です。

人間の欲求を五段階に分類し、ピラミッドのような階層構造にあるとされています。そして、下位の欲求が満たされると、その上の欲求の充足を目指すと言われています。

下位の欲求から順に、生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、尊厳欲求、自己実現欲求となっています。

各欲求が意味するものは次のとおりです。

  • 生理的欲求:空気、水、食べ物、睡眠など、人が生きていく上で欠かせない根源的な欲求です。
  • 安全欲求:危機を回避したい、安全・安心な暮らしがしたいという欲求です。
  • 社会的欲求:集団に属したい、仲間が欲しいという欲求です。
  • 尊厳欲求:他者から認められたい、尊敬されたいという欲求です。
  • 自己実現欲求:自分の能力を引き出し創造的活動がしたい、自己の存在意義を実現したいという欲求です。

下位の欲求を満たし、上位の欲求に向け働きかけることが、人や組織が意欲的に、モチベーション高く動くためには大切です。

(2)ハーズバーグの動機付け・衛生理論

フレデリック・ハーズバーグによって提唱された仕事に対する満足や不満足に関する理論です。ハーズバーグは、仕事に対する満足をもたらす要因と不満をもたらす要因が異なることを示し、前者が動機付け要因、後者が衛生要因と呼ばれています。

動機付け要因には、仕事の達成、存在や功績の承認、仕事そのもの、責任範囲の拡大、昇進や自己成長などが挙げられます。

衛生要因には、会社の方針や管理手法、監督者とその関係、労働環境、給与、職場の人間関係などが挙げられます。

衛生要因に関することが向上することにより不満は解消されるが、そのことで満足感や意欲、モチベーションが高まるとは限りません。動機付け要因が与えられることにより、満足感や意欲、モチベーションが高まります。

(3)マクレガーのX理論・Y理論

ダグラス・マクレガーによって提唱された人間観に関する2つの対立的な理論のことです。

X理論では、人間は主体性のない怠け者であると観ます。したがって、強制や命令、賞罰をもとに管理していきます。

Y理論では、人間は働くことに喜びを感じ、自発的に努力すると観ます。したがって、自主性を尊重し、目標や裁量・権限などをもとに管理していきます。

実際には、人間誰しもX理論、Y理論の両方の側面を持っています。

目の前の人、組織の状況や特性、成長度合いに応じて、X理論に基づく管理とY理論に基づく管理の比重を変えていくことが効果的でしょう。

人の意欲(モチベーション)に関する先人たちの教え

人の意欲、動機付けとなるものが何であるかは、古くから探求されてきたことのようで、様々な寓話・格言があります。

それらはとても示唆に富んだものでもあるので、ここでもいくつか紹介します。

(1)衣食足りて礼節を知る

これは古代中国の書物「管子」の中に出てくる「倉廩(そうりん)実(み)つれば則ち礼節を知り、
衣食足れば則ち栄辱を知り」という一節に基づく言葉です。

管子は、いくつかの国同士で覇権争いが続いていた時代に、そのうちの一つの国である「斉」の宰相として、斉が勢力を伸ばして覇者となることに貢献した政治家・管仲の思想をまとめた書物です。

人は、着るものや食べるものなどが十分となり、心に余裕ができれば礼儀を知り、節度を守るようになるとのことです。

逆に言えば、何かに意欲的に、モチベーション高くなるためにも心にゆとりが持てるほどの生活は必要ということですね。

(2)人はパンのみにて生きるにあらず

これは聖書の中にあるイエス・キリストの「人はパンのみにて生きるにあらず。神の口から出る一つ一つの言葉による。」という言葉の一部です。

人が生きてくうえで、食べ物以外にも必要なものがあり、それは一人ひとりの生き方、心の持ちようも大切だということです。

生活のためだけでなく、衣食住以上に大切にしていることも人の意欲、高いモチベーションを引き出していく上で大切なことですね。

(3)3人のレンガ職人の話

こんな話があります。

旅人がとある街に向かう一本道を歩いていると、一人の男が辛そうにレンガを積んでいました。
旅人はその男に向かって「ここで何をしているんですか?」と問うてみました。
するとその男は「見ればわかるだろう。レンガを積んでいるのさ。」と答えました。

それを聞いて旅人はその男に労わりの言葉をかけ、また歩き出しました。

もう少し歩き続けると一生懸命にレンガを積んでいる別の男に出会いました。
旅人はその男に向かって「ここで何をしているんですか?」と問うてみました。
その男は「壁を作っているのさ。早く仕上げたくてね。」と真顔で答えました。

それを聞いて旅人はその男に励ましの言葉をかけ、また歩き出しました。

またしばらく歩くと生き生きと楽しそうにレンガを積んでいる別の男に出会いました。
旅人はその男に向かって「ここで何をしているんですか?」と問うてみました。
その男は「みんなが集まり、幸せになれる聖堂を作っているのさ。素晴らしいだろう!」と嬉しそうな顔で答えました。

それを聞いて旅人はその男にお礼の言葉をかけ、元気よく歩き出しました。

同じようにレンガを積む作業をしていますが、目的や心の持ちようで本人の意欲は全く異なります。

ある仕事を単なる作業として渡すのか、その仕事の意義を伝えて意欲を引き出すのかによって、人の働きぶり、主体性は大きく変わります。

できれば3人目のレンガ職人のように、喜びや意欲、主体性を持って人や組織にはモチベーション高く動いてもらいたいものですね。

相手の意欲を引き出す5つのポイント

相手の意欲を引き出し、モチベーションを高く保つには次のようなポイントがあります。

(1)相手の立場に身を置き、意欲(モチベーション)を高める要因、妨げる要因を見極める

マズローの要求五段階説、ハーズバーグの動機付け・衛生理論、マクレガーのX理論・Y理論などにあるように、人それぞれに意欲(モチベーション)を高める要因、妨げる要因があります。同じ人でも状況によって変わることもあります。
相手の立場に身を置き、その欲求に対応した方法をとることが大切です。

(2)相手に目的意識を持たせる

レンガ職人の話にあるようにどのような目的意識で行うかによって本人の意欲(モチベーション)は大きく変わります。
相手の高次の欲求を満たすような目的意識を持たせることが大切です。

(3)相手の選択、主体性に任せる

人は自分で選択し、主体性を持って取り組んでいるときの方が高い意欲(モチベーション)を持ちます。
あなたが素晴らしいアイデアを思い付いたとしても、それを相手に押し付けるのではなく、相手に選択の余地を残したり、関わり方を工夫して相手が同じようなアイデアを思い付くようにしたりする方が相手の主体性が発揮され、高い意欲(モチベーション)が引き出されます。

(4)相手の成長の機会にする

人は自分自身の成長、何かに成熟することに喜び、幸せを感じます。相手が目の前の作業を自分の成長の機会と思うようにしたり、その成長を認めて相手に伝えたりすることで高い意欲(モチベーション)が引き出されます。

(5)相手の心が響くような大切にしている信念・価値観を尊重する

相手の心の中にある強い欲求の源は、一人ひとりが心の奥底に持つ信念・価値観、人生における使命や目的のようなものです。
それらに沿った行動は、それをとることで本人の心が響くような感覚も起きていきます。
そうした心が響くような信念・価値観などを見極め、尊重して関わることで、相手の高い意欲(モチベーション)が引き出されます。

人と組織を動かすために、相手の意欲(モチベーション)を引き出していくことをお試しください。

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