心に響き、役に立つ経営理念の作り方

永く続く会社には経営理念があり、その大切さはあちらこちらで耳にします。トヨタ自動車・本田技研工業・パナソニックのような世界的に有名な大企業でも、グーグル・ヤフーのようなIT企業でも、あるいは日本で一番たいせつにしたい会社に挙げられている日本理化学工業・伊那食品工業のような中小企業でも、基本理念・企業理念などと言葉こそ違え、経営理念を掲げています。

経営理念の重要性は雑誌や書籍などのいろいろなメディアに取り上げられ、経営セミナーでも耳にする機会はたくさんあります。そうしたことに刺激を受け、自社の経営理念を作られた経営者は数多くいます。

そして、その経営理念に沿って迷いなく自信を持って経営されている経営者、人心が一体となっている会社、業績を伸ばしている会社はたくさんあります。

その一方で、経営理念の作り方がわからない、作ったけれどカタチだけになってしまっている、役に立っていない、浸透していないなどの悩みを抱えている経営者もいることもまた事実です。

今回の記事では、会社を改革していきたい経営者、これから事業を始められる創業者に向けて、カタチだけではなく、魂が宿り、心に響き、役に立つ、そんな経営理念の作り方をお伝えします。

1.経営理念とは

経営理念の作り方をお伝えする前に、そもそも経営理念とは何かを振り返ってみましょう。

広辞苑では、経営理念を「企業経営における基本的な価値観・精神・信念あるいは行動基準を表明したもの」、理念を「俗に、事業・計画などの根底にある根本的な考え方」としています。

会社によっては、企業理念・基本理念・社是・社訓・クレドなどの言葉でまとめていますが、全てはこうあるべきだという根本の考えを表したものです。これは、経営上の重要な判断の拠りどころとなるだけではなく、会社の雰囲気・文化を創り、全従業員の考え方・行動のもととなり、業績にも影響を及ぼします。

魂が宿り、心に響く、そうした優れた経営理念は、自社が社会・世界に対してどのように貢献していくかを表しています。自社に関わる全ての人の情熱・働きがい・誇りの源になります。この会社で働きたい、この会社の商品・サービスを利用したい、この会社のために何かをしたいという気持ちを呼び起こします。

会社が成長していくとき、会社を改革するとき、あるいは新たに事業を起こすときなどの変化のときに、経営理念は地図であり羅針盤でもあるものです。

経営理念とは?

  • 企業経営における根本的な考え方を表したもの

 

経営理念を作るメリット

  • 経営上の重要な判断の拠りどころとなる
  • 会社の雰囲気・文化・社風が創られる、または明確になる
  • 全従業員の考え方・行動に一貫性が生れる
  • 自社に関わる全ての人の情熱・働きがい・誇りの源になる

2.経営理念の4つの要素

経営理念の作り方をお伝えしていく上で、経営理念にはどんな要素が含まれるかを確認しておくことも重要です。いろいろな考え方がありますが、私は使命・存在意義(ミッション)、信念・価値観(バリュー)、行動指針・行動規範(ウェイ)、目指す姿・目標(ビジョン)の4つの要素を重視しています。これらはすべて盛り込まれてもいいですし、特に重要と思われる要素だけを盛り込むのもいいでしょう。

(1)使命・存在意義(Misson/ミッション)

自社が何者か、何を成し遂げるのか、何のために存在するのかを表します。
会社は誰のためのものか?という問いを耳にすることがあります。お客様のため、従業員のため、株主のため、経営者のため、社会のためなど、人によって答えは様々でしょう。どれが正しくてどれが間違っているということはありませんし、どれか一つに絞らなければいけないというものでもありません。経営者が正しいと思う相手に対して、どのような貢献をするのかを表します。

例えば、京セラグループの経営理念「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」は使命・存在意義の要素を感じます。

(2)信念・価値観(Value/バリュー)

自社の使命・存在意義を体現していくにあたって、大切なこと、固く信じて疑わないこと、判断や行動の基礎となるものです。

例えば、京セラグループの社是「敬天愛人」、トヨタ自動車の豊田綱領、Googleが掲げる10の事実などは信念・価値観の要素を感じます。

(3)行動指針・行動規範(Way/ウェイ)

自社の使命・存在意義を体現していくにあたって、信念・価値観にもとづいてどのような行動をとっていくかを表したものです。信念・価値観のように内面的なものではなく、外面に現れる行動を表しているので社内外の人にとって目に見えやすく、実感しやすいものでしょう。

例えば、ヤフーの4つの約束「課題解決って楽しい」(自分ではなく、誰かの課題を解決しよう)、「爆速」(速くやろう)、「フォーカス」(得意なものを1個磨こう)、「ワイルド」(迷ったらワイルドな方を選ぼう)や、リッツ・カールトンのサービス・バリューズ、日本理化学工業の行動指針なども行動指針・行動規範の要素を感じます。

(4)目指す姿・目標(Vision/ビジョン)

自社が事業を続けていくことで実現を目指す、自社や社会の姿を表したものです。どのような会社にしたいのか?どのような社会や世界、未来を創り出すことに貢献したいのか?その10年後や20年後といった長期的な期間で目指す姿を言語化することで、従業員やお客様、取引先などの利害関係者に対して、自社がどこに向かっているのかを示すことができます。そして、魅力あるビジョンは、利害関係者の行動を引き出します。測定可能な目指す成果が含まれていると更にわかりやすいでしょう。

例えば、ANAホールディングスのグループ経営ビジョン「ANAグループは、お客様満足と価値創造で世界のリーディングエアライングループを目指します」や、日本理化学工業のビジョン/目標「日本一強く、優しい会社を目指す。経営的にも強く、精神的にも強く、人に優しく接することができ、人と環境に優しい商品を作り続ける」などは目指す姿・目標の要素を感じます。

経営理念の4つの要素

使命・存在意義(Misson/ミッション)
自社が何者か、何を成し遂げるのか、何のために存在するのかを表すもの

信念・価値観(Value/バリュー)
自社が使命・存在意義を体現していくにあたって、大切なこと、固く信じて疑わないこと、判断や行動の基礎となるもの

行動指針・行動規範(Way/ウェイ)
自社が信念・価値観にもとづいてどのような行動をとっていくかを表したもの

目指す姿・目標(Vision/ビジョン)
自社が事業を続けていくことで実現を目指す、自社や社会の姿を表したもの

3.経営理念の作り方

ここまで、経営理念の作り方に入る前に、経営理念の定義、含まれる要素を見てきました。ここからは実際に経営理念の作り方に入っていきましょう。

(1)経営者の理念を明らかにする

まずは、安心して落ち着ける場、リラックスできる雰囲気、集中できる環境においてゆったりしてみましょう。そして、自分自身を振り返り、自らの理念を問いかけてみるといいでしょう。

自らへの問いかけとしては、例えば以下のようなものがあります。

  • 人生の中で絶対に実現したいことは何か?
  • これまでの人生の中で喜びや感動を感じたのはどのようなときか?
  • これまでの人生の中で怒りや哀しみ感じたのはどのようなときか?そのときは何が踏みにじられたり失われたりしたのか?

人間は質問が与えられれば何かしらの答えを出します。こうした問いの答えからご自身の使命や存在意義、価値観、行動指針を見つけていきます。大切なことは、どれだけ経営者自身の心が動かされるか、心の響きを感じるかどうかです。

おすすめは、こうした問いの答えを探るときにコーアクティブ・コーチング®を修得したコーチとともに行うことです。コーアクティブ・コーチングでは、心に響いているかどうかを大事にする一面があります。経営者のお話をコーチが傾聴し、受け取ったものを反映し、経営者も自分の在り方を認知されるなかで、真に心に響くことが何なのかを明確にしていきます。

こうして出てくることは経営者個人の理念ではありますが、会社のことを誰よりも考え、一番の責任を負い、自分の人生を会社にかけているのは、まさに経営者です。その経営者の理念が共鳴を呼び、従業員やお客様、取引先などの利害関係者と心が響き合う関係を作り上げれば、何よりも心強い会社の財産となるでしょう。
したがって、経営者個人の理念は会社の経営理念を作る上で欠かすことのできないものです。

(2)組織の想いや内部の関係性を明らかにする

組織で活動していると、自然とその組織らしさが作られていきます。どんな意見や考えも尊重される安心安全な場を作り、明文化されていない、声に出されていない組織の想いや関係性を明らかにすることも経営理念を作る上で参考になります。

そのときに、会社の成り立ちやこれまでの歩み・歴史、重要な出来事、現在の状況を振り返るといいでしょう。

個別のヒアリング、グループディスカッション、ファシリテーターを招いてのワールドカフェなどいろいろなやり方がありますが、おすすめはシステム・コーチング®(Organization & Relationship Systems Coaching®)を修得したコーチとともに行うことです。

システム・コーチングでは、組織の成り立ちを振り返るワーク、意図的な協働関係を構築するワーク、普段とは違った立場で組織における貴重な意見・考えを引き出すワークがいろいろと用意されています。それらを通じて理念や関係性を明らかにしていくことで、経営者だけでなく従業員にとっても心が響く経営理念を作ることにつながります。

(3)行動と学習により真の経営理念を創り上げる

こうして経営者個人の理念や、組織の理念・関係性を考慮して経営理念を創り上げることになりますが、みなさまのなかには「経営理念は一度決めたら絶対に変えられない」と思っている方はいらっしゃいませんか?

私は、何度かの見直し・変更を経て、真の経営理念が創り上げるべきと考えています。経営理念は、永く続けていく会社の根底にある根本的な考え方です。一度決めたら絶対に変えられないと思うと決まるものも決められなくなります。それよりも、一度決めてみて、それに基づいて事業を行い、それを振り返って見直し・変更をしていく方が、より自社に適し、個性的・特徴的で、心に響き、役に立つ経営理念になります。つまりPDCAサイクルを回して真の経営理念を創り上げるということです。

永続企業のもととなるものですから、数年かけて仕上げていくくらいの心持ちでもいいでしょう。

経営理念の作り方

  • エグゼクティブ・コーチングにより、経営者の会社にかける想いを明らかにする
  • 組織・関係性コーチングにより、明文化されていない、声に出されていない組織の想いや関係性を明らかにする
  • 行動と学習、PDCAサイクルにより、真の経営理念が創り上げる

 
何度か「コーチング」に触れていますが、こちらの記事も参考になります。
>> コーチングによる経営理念の作り方

4.いろいろな会社の経営理念

これから経営理念を作られる方にとってイメージがわきやすいようにいろいろな会社の経営理念の例をこちらで紹介しています。

>> 大切にされる会社の経営理念の一覧

こちらで紹介しているのは、人を大切にする経営学会主催「日本で一番大切にしたい会社」大賞( http://taisetu-taisyo.jimdo.com/ )で受賞された企業の経営理念です。

一番大切にしたいと思われる企業ですから、きっと人の心に響く何かがあるはず。そう思って調べてみました。

ここに一覧にした経営理念の例をご参考に、心に響き、役に立つ経営理念のイメージを高めていってください。

5.まとめ

経営理念は、経営上の重要な判断の拠りどころとなるだけではなく、事業を進めていく上での情熱やモチベーションの源であり、会社の雰囲気・文化を創り、全従業員の考え方・行動のもととなり、業績にも影響を及ぼします。

経営理念の重要な要素として、使命・存在意義(ミッション)、信念・価値観(バリュー)、行動指針・行動規範(ウェイ)、目指す姿・目標(ビジョン)があります。

経営者個人の理念や組織の理念・関係性を明らかにしていくことでこれらが明らかになり、経営理念は創られていきます。このとき、コーアクティブ・コーチングやシステム・コーチングを利用すると、経営者や会社の個性・特徴が伝わる、心に響く、役に立つ経営理念に近づきます。

多くの人にとって聞こえの良くて当たり障りのない経営理念ではなく、心に響く、役立つ経営理念は様々な共鳴を呼びます。

会社が、従業員やお客様、取引先などの利害関係者と心が響き合う関係を作り上げれば、何よりも心強い会社の財産となるでしょう。

それに向けて、この「心に響き、役に立つ経営理念の作り方」が経営理念を作る上での一助になれば嬉しい限りです。
 

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