前回は「心に響き、役に立つ経営理念の作り方」と題して、経営理念の作り方についてお伝えしました。今回は、経営理念を作ることと同じくらい大切な経営理念の浸透のさせ方についてお伝えします。
大きなポイントは心に響かせることと、広まる仕組みを作り接する機会を増やすこと、自分事にすること、身体で覚えることです。
経営理念が浸透すれば、日常の行動や重要な判断が同じ方向に向いたものになります。
経営理念が浸透すれば、新入社員から経営者までが同じ方向へ進んでいきます。
経営理念が浸透すれば、会社としての文化・雰囲気・社風といったものが定まります。
これらは社内にとどまらず、お客様や取引先といった社外の利害関係者からも信頼される基となります。
心に響き、役に立つ経営理念を作り、それを浸透させていきましょう。
1.経営理念に関する物語を伝える。
経営理念を浸透させていくためには、そこに込められた意味や想いを理解してもらえるといいですよね。そして、更にはそれらが心に響くようなものであれば、聞いた人の頭と心にしっかりと刻み込まれるでしょう。そうすれば、社内外に関係なく、そうした経営理念を掲げる会社のファンになってくれるでしょう。
そうしたときに物語の力はとても大きなものです。
例えば「社会に貢献する会社」を経営理念に掲げている会社があったとします。この会社がどうしてこの経営理念を掲げているのか、その背景を知っているのと知らないとでは、この経営理念の受け止め方は大きく変わりますよね。
背景も何も語られない場合、極端に言えば、経営理念を掲げるのが今の経営手法の主流だからそれらしいことを掲げているのだろう、と思われてしまうかもしれません。
逆に、この会社あるいは経営者と社会との間にどのような関わりがあったのか、それが今のこの会社にどんな影響を及ぼしているのか、社員や経営者がそこからどんなことを気づき、学び、その後に活かしたのか、そんなこの会社らしさを表す逸話が語られているとどうでしょうか?
「社会に貢献する会社」という言葉の背後に、これまでの苦労と成長への敬意と称賛、社会に対する感謝の気持ちと恩返しの姿勢を感じてくれる人が出てきます。
素晴らしい物語は、人を魅了する力を持ちます。
そして物語とともにある経営理念は、単なる言葉ではなく、心に響くもの、魂が込められたものとなります。
自分は口下手だという意識がある経営者、そんな物語はないと思っている経営者は、中身やまとまりがなくてもいいので人に話してみてください。話してみれば、自然と経営者が大切にしていることが語られ、まとまっていくものです。
まずは、コーチや深い傾聴ができるコンサルタント、聞き上手と言われる人たちに話してみましょう。そこから物語はまとまっていきます。
ぜひ、経営理念を浸透させるために、経営理念に関する物語を語りましょう!
2.経営理念を経営者が率先垂範する。
組織においてそのトップである経営者の影響力は大きなものです。いろいろな人がその言動を見ています。
経営者が経営理念に掲げているような価値観や行動規範を率先し、模範となれば、それは経営者の誠実さ、本気度を示すものとなります。それは、周囲の人の経営理念への理解を深め、信頼を高めることになります。経営者への敬意や信頼を高める人も少なくないでしょう。
人は、人の本気さを自然と見抜くものです。その心意気を感じるものです。それは間違いなく伝わります。
逆に、経営者が経営理念をないがしろにし、経営理念と矛盾する言動をとっていたらどうなるでしょうか。間違いなく経営理念は形骸化します。何の理念もない会社、形だけの規則があるだけの会社では、ニュースで話題になるような不祥事が発生することもあるでしょうね。
人間ですから非の打ちどころのない完璧な言動を常にし続けるのは無理があるかもしれません。求められるのは、自分の言動の重要さを知り、振り返る機会を持つことです。それが経営理念の浸透を左右します。
そのためにも、経営者に対して率直なコミュニケーションが取れる社内の腹心・片腕となる人、あるいは社外のコーチやコンサルタントといった経営者にとって耳の痛いことも率直に伝えてくれる人を確保しておきましょう。
経営者自らが率先垂範し、経営理念を浸透させていきましょう!
3.経営理念に接する機会を増やす。
経営理念を浸透させていくため、仕組みを作り、従業員を始めとする関係者が経営理念に接する機会を増やしましょう。
(1)社内に掲示する。
多くの会社が行っている基本的な仕組みです。自然と目に入るように目立つところに掲げましょう。
(2)朝礼や会議で唱和する。
同じく多くの会社が行っている基本的な仕組みです。一日の仕事の前に気持ちを込めて声に出して唱和することは、アファメーションとしての効果も期待できます。
(3)経営理念をホームページに掲載する。
これは社外にも伝え、会社のブランドを作っていくことにも役立ちます。
(4)経営理念について学ぶ研修や合宿を開催する。
普段の業務から離れて集中する環境を用意して伝えることも大切です。
(5)自社内で起きた経営理念に沿った出来事を共有する。
身近な出来事から経営理念について学ぶと理解がしやすいでしょう。その出来事に関係した人にとっては自分のことを認めてもらう機会にもなり、その後の励みになるでしょう。
(6)経営者が節目節目で経営理念を語る。
年初式、納会、入社式、創立記念日など、経営者が社員に向けて直接話す機会はたくさんあるでしょう。そうしたときに経営者が経営理念を語るのは従業員にとっても経営理念の大切さを認識するいい機会になるでしょう。
(7)経営理念をカードや手帳にして常に携行する。
いくつかの有名な会社が行っている方法です。社外の人にも知ってもらうように名刺の後ろに記載するのもいいでしょう。
(8)その他
その他にも様々な方法があります。ぜひ自社の状況に適した経営理念を浸透させていく取り組みを考えてみてください。何人かの人とブレインストーミングをして出してみるのもいいでしょう。
実際にやってみてもうまくいかなかったとしてもその経験から学べることが必ずあります。失敗してもなお取り組み続けることも大切です。コーチやコンサルタントは、試行錯誤を重ねるあなたの努力を認めたり、あなたを励ましたり、一緒に次のアイデアを作り出すのに役立ったりと、あなたの良きパートナーになってくれるでしょう。
ぜひ会社の文化・雰囲気・社風・ブランドを作り出すためにも試行錯誤を重ねながら接点を増やしたり、仕組みを作ったりして経営理念を浸透させていきましょう!
4.人事評価制度に経営理念の観点を盛り込む。
経営理念を浸透させていくために、従業員に自分事としてとらえてもらうことも大切です。そのために人事評価制度を活用しましょう。
人事評価制度は、業績・成果を評価したり、能力を評価したりなど、会社によってやり方は様々だと思います。そこに情意・服務態度等の評価も加えましょう。
そして、経営理念に沿った行動をしているか、経営理念に沿った姿勢で日常業務を行っているかを本人に意識してもらいましょう。これらは上司のフィードバックによって更に効果を発揮するでしょう。
5.経営理念を身体で覚える。
コーチングでは、身体感覚や動きなどを使って身体で覚えたり、身体が感じていることの意味を見出したりすることがあります。
これを、経営理念を浸透させていく、従業員に経営理念をより深く理解してもらうことに応用することもオススメです。
コーアクティブ・コーチング®、システム・コーチング®を用いるコーチであれば、この辺りを自然と用いたコーチングを行ってくれます。
目で見て耳で聞いて頭で理解することに加え、身体を使って経営理念のエッセンスを身体で理解し、覚えること、これはさらに深いレベルで経営理念を浸透させていくことに役立ちます。
まとめ
どんなに素晴らしい経営理念を作ったとしても、それが社内外に浸透していなければ非常にもったいないことです。
今回の記事では、経営理念を浸透させていくための5つのポイントをご紹介しました。物語の力、経営者の率先垂範、創意工夫・試行錯誤で仕組みを作って接する機会を増やす、人事評価制度の活用、そして身体感覚の活用と。
会社の文化・雰囲気・社風・ブランドを作り出し、日常の行動や重要な判断に一貫性を持たせ、業績を変えていくために経営理念を浸透させていってください。
経営理念をもとにあなたが望む会社が実現するのを楽しみにしています。
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